『なんて言うんでしょう、青春の揺らぎというか、煌めきというか、若さの影、とでも言いましょうか』
高校生活最後の行事、歩行祭。朝の八時から翌朝の八時まで歩く、歩く、ひたすら歩く・・・。
歩きながら物語がすすんでいく、という構成はまさに「黒と茶の幻想」の高校生版、または青春の揺らぎ版、といった感じです。
いいです、いいです。こういう話を書かせたら本当に恩田さんは巧い。
高校時代って、やっぱり特別なもので、おそらく自分たちもそう気づいている。多分、今が人生のなかできらめく瞬間なのだと、わかっている、だから精一杯生きたいんだけれど、どこか素直になれない。
誰もが感じるそういう思い入れのようなもの、そして、この時代に特有の潔癖さがとても巧く描かれています。
恩田さんの作品に登場する若者(変な表現?)たちは、必ず聡明で美形、というところもいいですね。とくに男子(笑)。私の今回のお気にいりは忍くんでした。彼の恋の行方は・・・どうなるのでしょう。
あと、脇役ですが、夜になると妙に元気になる高見くんがいい味出してました。
そこにはいないのに、大きな存在感をもって語られる、杏奈という同級生がストーリーのいいスパイスになっています。これも「黒茶」の憂理を思い出させます。多分、これも恩田さんは確信犯でしょう。
読んだあと、主人公たちと一緒に歩いたようなちょっとした達成感があったのが不思議です。楽しい時間を過ごすことができました。
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